書籍・雑誌

2009年10月27日 (火)

「小学5年生」、「小学6年生」休刊へ

小学館の学習雑誌「小学5年生」、「小学6年生」が休刊するというニュースを読みました。1922年に小学館が創業したときから続いていた雑誌なのだそうです。わたしも子どものころ愛読していました。

近所の本屋さんが昔は本の配達をしてくれたので、発売日ごろになると楽しみで楽しみでたまりませんでした。一日間違って早く届かないかなあ、なんて期待して、やっぱり来なくてがっかりしたり。懐かしいです、ほんとうに。

雑誌も楽しかったけど、付録も楽しみでした。紙でつくる工作とか、物知りブック、パズルブックといったもの。一か月をその一冊の雑誌でたっぷり楽しみました。いまの子どもたちと比べると、雑誌の愛用度がかなり違うと思います。

自分が大好きだったので、子どもにも「小学○年生」を買ってましたけど、あまり興味をもたなかったので、低学年でやめました。そのとき、なんだかさびしい気がしたのを覚えています。やはり、現代の子どもが求めているものとはズレがあったのかもしれません。そしていよいよ休刊。発売日を心待ちにしていた日々を思い出すと、ちょっと胸がいっぱいになります。

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2009年10月21日 (水)

久しぶりの村上春樹小説「東京奇譚集」

学生時代「羊をめぐる冒険」が好きでした。いろいろと変わった人たちがでてきて、なんかよくわからないようなわかるような、そういう感じがとても好きでした。

その後、「ノルウェイの森」(あの赤と緑の表紙の上下巻!)が大ヒットして、村上春樹さんはどんどん超有名作家になられました。それでなんとなく、「ノルウェイの森」を最後に、村上さんの小説は読まなくなりました。でも、翻訳もののほうは、カーヴァーやフィッツジェラルドや「キャッチャー」や「ロング・グッドバイ」読ませてもらってました。

今年は久々の長編「1Q84」が大ベストセラーになったこともあって、ふと図書館で見かけた短編集「東京奇譚集」を読んでみました。ほんとに数十年ぶりの村上春樹小説です。

読んでよかったぁ。わたしの好きだった村上春樹がちゃんと本の中にいる感じです。どの短編を読んでも、なんか、人間が好きになる。登場する人々は、ごく平凡な人みたいでありながら、とっても奇妙。高層ビルの間を綱渡りするのをライフワークとしている女性とか、突然マンションの階段で消えてしまうサラリーマンとか、自分の名前を猿に盗まれてしまう女性とか。不思議だけど、ありえないような話だけど、なんかわかる気がするし、あったかい。

また村上さんの本が読みたくなったので、今年の自分へのクリスマスプレゼントは「1Q84」に決定です。その前にジョージ・オーウェルの「1984」を読んでおこうっと!

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2009年10月19日 (月)

小説「風の影」

「風の影」カルロス・ルイス・サフォン著。久しぶりの原語が英語でない翻訳書です。文庫本で上下二巻ですが、面白くて一気に読み終えました。

舞台はスペイン内戦後のバルセロナ。恥ずかしながら、スペイン内戦のことってほとんど知らないのですが、国が荒れて、裏切りや絶望に翻弄された世界というのはわかります。ストーリーは、ひとりの少年が、古書店を営む父につれていってもらった「忘れられた本の墓場」で隠れた傑作小説に出会うところからはじまります。ほとんど売れなかったその作家の小説は、ある人物により、ことごとく焼き捨てられ、現存するものは少年が手に入れたものを含めごくわずかしかない。やがて、少年がその謎めいた作家の過去を調べていくにつれ、徐々に秘密が解き明かされて、この作家と深い因縁のある悪辣な刑事とも対決するという、抒情あふれるミステリーロマンです。

謎ときと並行して、少年が青年となり恋をして、大人になっていくという成長物語でもあります。内戦のせいでホームレスとなり、心に大きな傷を負っている男フェルミンが、少年の親友となって謎ときを助けてくれるのですが、この人物がとても魅力的なんです。彼のしゃべりかたがすごくすてき。これは翻訳者のお力だと思うのですが、もっと違うしゃべり方だったらとても印象が違っていたことでしょう。

また、小説のそこここに、ストーリーとは直接関係がないけれど、心打たれる文章があって、それもこの小説の魅力のひとつです。たとえば、フェルミンがこんなことを言います。

「ダニエル、親子の関係というのはね、ちっぽけな、心やさしい、数えきれないほどのうそのうえに成り立っているんです」

昔は英語圏でない翻訳ものも読んでいたけど、このごろは映画も小説も英語圏のものばかり。なので、とても新鮮でした。英語にかたよっちゃいけないなと思って、ときどき、数は少ないですけど、違う言葉の小説も読むようにしています。今回はスペインの小説。もしかするとスペイン語で書かれたスペインの小説ってはじめてかもしれません。バルセロナ、行ってみたくなります。

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2009年9月29日 (火)

小説「官僚たちの夏」

ドラマ「官僚たちの夏」がすばらしかったので、城山三郎さんの原作も読んでみました。

主要登場人物や時代背景は同じなのですが、主役の風越はずいぶん性格が違いました。どっちかというと、「おやじさん」タイプ。私利私欲がないからいいけど、けっこう独善的で、後先考えずに物を言って敵をつくっちゃうタイプなんです。その彼との好対照が、進歩的な考えをもつ玉木や片山。わたしは柔軟な片山にいちばん好感をもちました。

小説では、天下国家のためには個人生活はすべて犠牲にして働くべしという風越派のひとびとの時代は終わり、仕事とプライベートは別のものとしてとらえ、仕事はちゃんとやるが、人生も楽しむ片山のような人物、あるいは情に流されず冷静に情勢を判断して動く牧のような人物の時代がやってくるという予感で終わっています。これを何十年も前に城山三郎さんは書いてたんだから、すごいですね。当時の首相と思われる人物も登場して、そのひととなりが面白いです。

テレビドラマ版「官僚たちの夏」については、8月12日9月20日の記事で書きました。

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2009年9月17日 (木)

「ハウス・オブ・ナイト1 ヴァンパイア寄宿学校へようこそ」携帯小説サイトで配信中!

book P.C.キャスト+K.キャスト著、古川奈々子翻訳の「ハウス・オブ・ナイト1 ヴァンパイア寄宿学校へようこそ」が角川書店の携帯小説サイト sarisariにて、無料配信中です。毎日更新されてますsign01

Dsc02217 ある日突然、額に刻印を押されてしまった平凡な女子高生、ゾーイ。ヴァンパイア研修生たちの寄宿学校ハウス・オブ・ナイトに転入した彼女を待ち受けるものは? (携帯サイトより抜粋)

翻訳したわたしがいうのもなんですが、面白いっす! 主人公は女子高生ですが、ティーンのみなさんだけでなく、若い女性、そして心は乙女の大人の女性、そしてもちろん男の方も、わくわくどきどきで楽しめる小説ですので、ぜひ、ぜひ、小説屋sarisariをのぞいてくださいね。

Sarisari_2 

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2009年9月12日 (土)

My翻訳書「雨上がりの恋人」

拙訳書のエリザベス・ホイト原作「雨上がりの恋人」が発売中です!

「あなたという仮面の下は」につづく、プリンス三部作の第二弾。

今回の主役は、謎めいた土地差配人ハリー・パイです。雇われた領地で、つぎつぎに農家の羊が殺されるという事件が起こり、ハリーが犯人という噂が流れます。しかし、雇い主である伯爵令嬢は彼を信じ、やがてふたりのあいだにロマンスが・・・

前作では、「カラスの王子」という面白いおとぎ話が物語のあいだにはさまっていましたが、今回も「ヒョウの王子」というおとぎ話が、令嬢がパイに語って聞かせるという形でうまく織り込まれています。令嬢がまじめにお話を聞かせているのに、ハリーが突っ込みを入れるところが楽しいです。男の人が考えそうなことだなあって、笑えます。

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2009年9月 8日 (火)

小説「風が強く吹いている」

ひさしぶりに、超さわやか系の本を紹介します。

三浦しをんさんの「風が強く吹いている」です。

じつはこの本は映画化されて10月31日に公開が決定しているので、ご存じの方も多いのでは。わたしは、映画化のことはよく知らなくて、ただ箱根駅伝小説だということで読みました。

ある無名大学の四年生が、自分が住む青竹荘の素人軍団10人を率いて、箱根駅伝に挑戦するという物語。陸上経験者はその四年生ハイジと、高校で問題を起こして現在は陸上部に所属していない一年生の走(かける)だけ。あとは個性豊かな素人ばかり。でも、ハイジはそれぞれの人に合わせた練習計画を立て、おだてたりおどしたりして、みんなを引っ張っていきます。練習はつらそうだけど、なんて楽しい充実した一年間だろうとうらやましくなります。

毎年箱根駅伝を楽しみにしているわたしとしては、とてもおいしい小説でしたし、青春群像もさわやかでよかったです。読後感は最高ですよ。あまりにうまくできすぎている、と斜にかまえてしまうとだめですけど、たまにはこういう直球さわやか系を楽しむのもいいものです。といっても、人物描写はち密で、薄っぺらな感じはまったくありません。

双子が出てくるんですが、わたしはどうしてもお笑い芸人のタッチの顔を想像しながら読んでしまってました。でも映画では、映画「タッチ」で主演した双子俳優、斎藤慶太さんと翔太さんが演じるようですね。また、ハイジは小出恵介さん、走は林遣都くんのようです。読んでいるとき、ハイジはもっとごつい人を想像してたけど、小出さんもけっこう合っているかも。林遣都くんはイメージにぴったりです!

追記:映画「風が強く吹いている」については11月3日のブログでどうぞ。

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2009年9月 5日 (土)

小説「新世界より」

読み始めたら止まらず、その小説世界に入り込んでしまう小説にたまにめぐりあうことがあります。貴志祐介さんの「新世界より」もそういう小説でした。そして、貴志祐介さんという小説家と出合えてよかったなあとうれしくなりました。だって、きっとほかの作品でも楽しませてもらえるでしょうから。

いまから千年後の日本。人口は数万足らずに減り、呪力(超能力みたいなもの)をもつ人間たちが、牧歌的な小さなコロニーをつくって暮らしている。コロニーの外は、予想もつかない荒れ果てた土地。けれど、コロニーで暮らす人々は平和で、昭和初期みたいな感じのアナログ的世界で暮らしているように見える。しかし過去1000年間のおぞましい血ぬられた歴史は封印され、人々(とくに子どもたち)は巧妙に管理されていたのだ

その歪んだ平和に違和感を覚える子らがいる。そしてその子らは、人類の歴史と自分たちの社会の恐ろしい仕組みを知り、大切な友だちを失うという悲しみの中で成長する。そして、人間の奴隷であったバケネズミがしかけてきた未曾有の大戦争に直面する。人類は滅びてしまうのか、それとも・・・・

以前、8月20日の「電話帳」という記事で紹介した、ものすごく長い小説です。でも読み始めたら長いなんてぜんぜん感じない。おもしろくてどんどんページが進んでしまいます。でもとても長いので、一晩では読破できないことが明白ですから、数日がかりで読みました。

おもしろいSFやホラーは、作者の卓抜した想像力によってひとつの世界が構築され、わたしたちはあたかもその世界をのぞく傍観者のような気分でページをめくります。この「新世界より」もそうでした。なんてすばらしいイマジネーションでしょう。消滅したはずの図書館が生物のような形に進化して生存しつづけているんですが、まず、ここで一気にひきつけられました。そして、ジェットコースター小説でありながら、人間の残虐性やエゴについて考えさせられる部分もあり、ただ面白いだけじゃありません。長いですけど、超オススメです。ありえない世界とか、血なまぐさいのはダメ、という方には向かないかもしれませんけど。

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2009年8月20日 (木)

電話帳

電話帳ってもう死語ですか? お店の電話番号はネット検索ですぐわかるし、個人情報を守る風潮の現在、電話帳に名前や住所を載せている人も減ってます(わたしも載せてません)。でも、あのずしんとしたイメージ、やはり電話帳ならでは、です。

Dsc02189久しぶりに、電話帳小説を手にしました。貴志祐介さんの「新世界より」。じつは、去年、自分用のクリスマスプレゼントに買おうかどうしようか迷った末、見送った本です。上下巻だったのがネックだった。というのも、一昨年に上下巻のを買って、つまらなかったので、二の足を踏んだんです。

そしたら、評判のたいへん高いこの本が、このたび新書版で一冊にまとまって出たので、買ってしまいました。ね、電話帳みたいでしょ。厚さを実感してもらうために、百円玉を置いてみました。

まだ読んでないですけど、楽しみです。

電話帳みたいな小説といえば、京極夏彦さんの小説が思い浮かびます。映画化もされた「姑獲鳥の夏」と「魍魎の匣」を読んだことがありますが、厚さなんかまったく忘れちゃうほど面白かったです。作者の筆力にただただ感嘆しました。電話帳ほど厚みがあることをものともせず読者をひきつける(というか電話帳であることが読者にとってうれしい)小説を書ける作家ってほんとうにすごいと思います。

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2009年8月14日 (金)

小説「レディ・ジョーカー」

7月24日の記事「うっかりもここまでくると」で、まちがって(下)から読みはじめたという失敗談を書いた高村薫作「レディ・ジョーカー」。結局(上)から読みなおし、めでたく、最初から最後まで読みとおしました。すごく面白かったです。

flairこの先、ネタバレあり。未読の方、要注意です。

むくわれない人生を生き、世の中へのやりきれない不満をかかえたさまざまな年齢の5人の男が競馬場で知り合った。彼らは内に秘めた怒りを、大企業の社長を誘拐して大金をゆすり取るという犯罪に昇華させようとする。ゆすられた会社の社長をはじめとする重役たちの苦悩、事件を捜査する刑事たちの駆け引きや仲間うちのかっとう、総会屋や新聞記者たち・・・入り乱れる人々のそれぞれ思惑や迷いを克明に描きながら、レディ・ジョーカー事件は、誘拐された社長の死と、誘拐犯一味のひとりであった刑事の自首によって静かに幕を閉じる。

この物語は、犯人たち、社長たちをはじめとする大会社の重役たち、合田雄一郎を中心とする刑事たち、そして新聞記者たちの視線から物語が構成されています。わたしは犯人グループの5人と、合田刑事、そして誘拐された社長にとても興味を覚えたので、最後までぐいぐい引っ張られて読みました。とにかく緻密によく練られた物語で、久しぶりに小説の醍醐味を味わわせてもらった気分です。結局、犯人グループのひとり(刑事)は合田を刺して自首するんですが、あとの四人はつかまらず。そしてゆすり取った大金も使われず(いつかは使われるのかもしれないけど)。新聞記者と主犯の老人が偶然出会うラストは、なんともいえない余韻が残ります。

たくさんの合田雄一郎ファンがいるのもうなずけます。複雑で魅力的。義兄との関係も、なんだか危うい美しさがある。合田刑事は高村薫さんの小説にはたびたび登場しているキャラクターのようですが、なにしろわたしはこの「レディ・ジョーカー」がはじめての高村薫ですから、比較はできません。ただ、昔、NHKドラマの「照柿」(「マークスの山」「照柿」「レディ・ジョーカー」はどれも合田刑事が主人公)を見て、とても印象に残っていました。ドラマでは合田を三浦友一さんが演じていました。「照柿」は暗い話だったなあ。野口五朗さんと田中裕子さんの暗さははんぱじゃなかった。レディ・ジョーカーに登場する合田はすごく心惹かれる人物ですが、ぴったり合う俳優さんのイメージはわたしには浮かびません。

いま「マークスの山」を読んでいます。若い合田が出てきます。合田刑事も作風も、ずいぶん印象が違います。わたしは「レディ・ジョーカー」のほうが好きだな。サイコパスな犯人が出てくる物語はどうも苦手です。

映画「レディ・ジョーカー」についてはこちらから

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2009年8月11日 (火)

カラスの親指

今期も前期にひきつづき、ノミネートされながら直木賞を逸した道雄秀介さん。紀伊国屋の文庫のベストセラーのリストの上位に何冊も道雄さんの作品が入っています。いま、旬の人なのかな。

道雄さんの「カラスの親指」を読みました。以前に「ラットマン」をご紹介しましたが、わたしが読んだ道雄作品はこれで4冊目くらい。しがない中年のおじさんの詐欺師ペアが、昔の因縁からやくざにつけ狙われはじめ、そのうちに、やはり詐欺を生業としている少女、その姉と元手品師の彼氏までがおじさんたちと同居しはじめる。疑似家族のかりそめの幸せを感じたのもつかの間、やくざのいやがらせがエスカレートし、5人は果敢に立ち向かうことを決意する・・・というストーリーですが、最後にもうひとひねりあります。道雄さんはだましの作家ですからね。

軽く読める小説なので、週末のリラックスタイムにちょうどいい感じです。あと味も悪くありません。トリックなどに過剰な期待をせずに楽しむのがいいと思います。

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2009年8月 5日 (水)

レッドデータガール2-はじめてのお化粧

荻原規子さんの「レッドデータガール1-はじめてのお使い」のつづきがやっと出ました。といっても、読んだのはもうずいぶん前。とってもおもしろかったので、ブログに書こう書こうと思っていたけれど、だいぶ時間が経ってしまいました。1も2も図書館で借りましたが、娘はすっかりはまって、結局どちらも買って手元に持っています。やはり、本ってそれくらいの魅力がないとだめですよね。

2は1よりもっと面白いですよー。不思議な力をもつ泉水子は、中学校までは紀伊山地の神社でひっそりと暮らしていましたが、いよいよ東京の全寮制の高校に入学します。そこには泉水子と同じような力をもつ少年少女がたくさんいるんです。うーん、日本版女子版ハリー・ポッターみたいですね。今回は、山伏の見習の少年だけでなく、いろんな少年少女が出てきて、ストーリーもおもしろいし、すばらしい続編です。つづきが早く読みたいけど、来年まで待たなきゃならないのかなあ。

泉水子ってすごいパワーをもっていそうなのに、なかなかそのパワーが出てこなくて、本人はうじうじしてるという、とても日本的なキャラです。でも、そんな自分がいやになって、少しずつがんばろうとしているところがかわいいんだなあ。やはり、少年少女の成長物語っていいですね!

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2009年5月26日 (火)

ボタニカル・ライフ

bud ふと、以前に読んで大好きだったカレル・チャペックの「園芸家12ケ月」という本をまた読みたくなって、図書館でさがしていたら、いとうせいこうさんがお書きになった「ボタニカル・ライフ」という本を見つけました。いとうさんの作品を読むのはこれが初めてですが、いやあ、面白かったです。

clover ベランダで植物を育てる自分はガーデナーではない、「ベランダー」だと自称するいとうさん。月2千円を上限と決めて、せっせと鉢物を買い、食卓にのぼるハーブや野菜果物の種をまき、ベランダと家の中にあふれかえる植物たちと共生生活を送っています。その生活ぶりを面白おかしく書いたエッセーで、ベランダで植物を育てたことのある人なら、「そうそう」と膝を打ちながら笑える楽しい楽しい本です。

tulip いとうさんのベランダーぶりはほんとうにユニークです。植物に対する偏愛もふつうじゃない。植物を守るためなら、平気で殺虫剤をかけまくる。自分でも平等じゃないと思いながら、やめられない。また、植物のなかでもひいきが激しくて、ベランダに置かれる順序もそれに従ってきめられる。いとう流は、自分と植物のあいだの対話のなかで編みだす育て方であって、本をひもといてマニュアルどおりに美しく花を咲かせたいとは思わない。だから、剪定もせずに枝は伸び放題、ほとんど枯れていても、もしかすると生き返るかもと、せっせと水や肥料を与える・・・・・・とまあ、面白い話ばかりです。

sun 植物を育てている人にはそれぞれの流儀や考え方がありますから、いとう流がすべてわたしにあてはまるわけじゃないのですが、似ているところも多い。この種をまいたら、どんな芽が出るかなとか、このまま育てたら来年はどうなるだろうかとか、ちょっと科学実験的要素がある。シャコバサボテンの短日処理の話なんか読んでたら、去年のポインセチアの短日処理を思い出しちゃいました。むかし、シャコバサボテンの短日処理もしたことあったなあ・・・。それに夏のベランダでの闘いにも共感できますねえ。わたしは早々に敗北を認めて、夏場は極力植物は育てないことにしてますけど。

book 植物を育てていない人にはピンとこないエピソードも多いかもしれないですが、身近に植物があって、植物の生育に関心がある人なら、いとうさんの気持ちがよくわかるし、いっしょに泣き笑いできると思います。そういう方には絶対お勧めの本。っていうか、もう読んでいるかも?

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2009年3月26日 (木)

小説「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

ブラッド・ピットの特殊メークがすごい、時間が逆戻りする、というくらいの知識しかもたずに観た映画「ベンジャミン・バトン」。2時間をたっぷり超える長編ながら、情緒あふれる作品で最後まで飽きませんでした。それで、最後のテロップのところをじっと見ていると、原作はなんとあのスコット・フィッツジェラルドじゃありませんか! すごく意外な気がして、本のほうも読んでみたいなと思いました。

さがしてみると、邦訳(原題:The Curious case of Benjamin Button、1922年発表)が出ています。しかも本邦初訳。どうやら映画の公開に合わせて初めて翻訳されたようです。文学的な「グレート・ギャツビー」のような作品とはまったく趣を異にするブラックな短編でした。

映画については2009年2月14日の記事で感想を書きましたが、人々の思いやりと理解にあふれる作品でした。ところが小説では、生まれたときからいきなり大人の大きさの老人で、父親にひどくうとまれ、生まれた病院では怪物扱いされ、さんざんな子ども時代です。年とるにつれ、若々しくスポーツ万能になるので、モテモテになりますが、こんどはベンジャミン自身が、年老いていく妻に冷淡になる。そして老齢になって外見が子どもになったころには、息子に邪険にあつかわれる。

すごく現実的で、乾いた作品ですが、短編小説として読むなら、けっこうおもしろいです。いろいろ考えちゃいますよね。結局、人間ってのは自分勝手で、自分にとって都合がいいときには相手にやさしいけれど、都合が悪くなると嫌悪するようになるということでしょうか。これをこのまま映画にしたら、あまりにも寒々とした作品になってしまいます。ブラピの映画は大筋は同じだけど、人間のやさしさや生きる喜び、そして時間の流れにはさからえないという達観がよく表現されていて、それはそれでよかったと思います。

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2009年3月15日 (日)

カラスの王子

今月発売された拙訳書「あなたという仮面の下は (ライムブックス)」(エリザベス・ホイト著)は、18世紀イギリスを舞台としたロマンスです。原題はThe Raven Prince。この本が大ヒットしたことを受けて、The Leopard PrinceとThe Serpent Princeがつづけて発表され、Prince三部作と呼ばれています。

さて、The Raven Princeを直訳すると「カラスの王子」。じつは、この本には、同タイトルのおとぎ話が織り込まれています。このおとぎ話もとても魅力的で、二倍楽しめるしかけになっています。おとぎ話のほうの「カラスの王子」もホイトさんのオリジナルだそうです。

ところで、カラスというと日本で見かけるふつうのカラスはcrowです。ravenは日本語に訳すとワタリガラス。日本で見かけるカラスよりももっと大型のものです。わたしはアラスカで本物のワタリガラスが飛んでいるところを見ましたが、たしかに大きかったです。しかもとても賢いそうです。

crowにせよ、ravenにせよ、カラスと言えば不吉な鳥のイメージですが、そうでもないこともあるようです。昨年、熊野に旅行したときに八咫烏(やたがらす)のことを知りました。そういえば、萩原規子さんの勾玉シリーズでもカラスが重要な役を果たしています。ブリタニカ小項目辞典によると、「神武天皇の建国説話にみえる烏。天皇が熊野から大和に進入しようとして山中で道に迷ったとき,アマテラスオオミカミ(『古事記』ではタカギノカミ)が八咫烏をつかわして,天皇の軍を導き,山中を抜け出させたという」。

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この写真の三本足のカラスが八咫烏です。三本の足は、智・仁・勇をあらわすとか、天・地・人をあらわすとか言われているそうです。

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2009年2月18日 (水)

小説「空飛ぶタイヤ」

タイトルの明るい感じとは裏腹な、大企業のエゴの犠牲になる中小企業や一般市民を描く重いテーマの作品です。でも、エンターテインメント小説ですから、苦しめられつづけても、最後は「水戸黄門的」勧善懲悪です。こんなにうまくはいかないだろうとは思うけど、やはり「待ってました!」といいたくなる、そんなさわやかなラスト。

このブログではつまらなかった本は紹介しないようにしているので、最近はどうしても紹介したいという本に巡り合えませんでした。でも、ブログ「山田史郎の特別付録」の2月9日の記事で、池井戸潤さんの「銀行総務特命」という本が紹介されていて、おもしろそうだったので、図書館で池井戸さんの本をさがしてみました。そこでたまたま手に取ったのがこの「空飛ぶタイヤ」でした。いやー、読んでよかった! すっごく面白くて、夜明け近くまで読みふけってしまいました。山田さんのブログは中小企業経営のさまざまなヒントが書かれていて、いつも興味深く読ませていただいています。そしてこの本にも巡り合わせてもらえて感謝です。ふだんは企業小説とか読まないので、とっても新鮮でした。

偶然あとから知ったのですが、「空飛ぶタイヤ」はWOWOWで仲村トオルさん主演で連続ドラマ化されるらしいですね(3月29日放送開始)。そのほかに、田辺誠一さん、萩原聖人さん、水野美紀さんらが出演なさるそうです。田辺さんは原作のイメージに合ってますが、仲村さんは本よりもずっとかっこいい。WOWOWには加入してないので見れなくて残念です。

さて、本の内容ですが、数年前に新聞でよく目にしたある自動車会社の話にたいへんよく重なります。もちろんフィクションですが、巨大組織って、銀行ってこんなふうなのかなあと思ってしまいます。主人公はまじめな中小運送会社の社長さん。とっても正義感のある好感のもてる人物です。その社長さんが、自社のトラックが死亡事故を起こしたことで、いじめにいじめられるのです。はたして原因は運送会社の整備不良か、あるいは自動車そのものの欠陥か? 一難去ってまた一難というわけで、終始はらはらのしどうしです。そのほかの登場人物は、どうしようもないエゴイストの悪者もいるけど、ほとんどがだれにも共通する多少のずるさをもつ野心家たち。それぞれの利害がからむ駆け引きにも興味をそそられます。こんなにつらい思いをして働いている方々がいると思うと、一日中パソコンに向かってればいい自分は、ストレスも少ないし、楽してるなあとしみじみ思います。

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2009年2月17日 (火)

映画&小説「クライマーズ・ハイ」

横山秀夫さんの小説「クライマーズ・ハイ」が刊行されたのは2003年。非常に評判が高かったのでその年の年末、たいていの本は図書館か文庫本で読むわたしが、ふだんはめったに買わない単行本を買いました。でも、買ってよかったーと心から思える力作でした。

横山さんは当時、すでにミステリー作家として有名で、「半落ち」がベストセラーとなっていました。でも、横山さんの作品を読むのは「クライマーズ・ハイ」が最初でした。最初の感動があまりに大きくて、しばらくは横山さんの本をたくさん読んだ記憶があります。「半落ち」をはじめ傑作が多いですが、わたしにとってはやはり「クライマーズ・ハイ」が最高です。

横山さんが記者時代に実際に取材にたずさわった、御巣鷹山日航機墜落事故を題材とした本書。新聞記者たちの壮絶な戦い(他社との、社内の人々との、そして自分との)が文章からダイレクトにびんびん伝わってきて、一気に読み終えました。

その名作が昨年、堤真一さん主演で映画化されて、見たいなと思っていたのに見逃していました。ところが、近所のシネコンでアンコール上映があったので、見に行ってきました。特別価格(1000円)のせいもあったのか、劇場は満員でした。

dangerここから先、ちょっとネタバレありsign01

3時間近くもある長い映画でした。でも、緊張が途切れることなく最後の大スクープをものにできるかできないかの場面では、観客であるわたしまで記者たちといっしょにクライマーズ・ハイ(登山中に緊張感が極限状態に達して怖いものなしになること)になった感じでした。結局、主人公の信条である「チェック、ダブルチェック」が「クライマーズ・ハイ」に勝ち、彼らの新聞社は特ダネを逃しちゃうんですが。

小説がとてもすばらしかっただけに、映画では物足りないかなと危惧がありましたが、映画もすごくよかったです。暑く息苦しい戦場のような現場の雰囲気がよく伝わってきました。さまざま人の利害がからむ社内の争い、携帯電話も無線もない時代の文字通り足でかせぐ取材。そうした生々しさが臨場感たっぷりに表現されていたと思います。評判どおり、堺雅人さんの演技も光っていました。

追記:NHKドラマ版「クライマーズ・ハイ」については2009年2月24日の記事に書きました。

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2009年1月21日 (水)

ラットマン-だまし絵の魅力

Damashie この絵、花瓶に見えますか? それとも、ふたりの人の横顔に見えますか?

有名なだまし絵を自己流に真似したので、左右対称じゃないところがご愛敬ですけど、花瓶か横顔のどちらかに見えてしまうと、もうそれにしか見えなくなりますよね。

道尾秀介さんの「ラットマン」はそういうお話です。もともとラットマンも(本文に図入りで説明が出てきますけど)、一種のだまし絵のことです。これからお読みになる人にネタバレしてしまってはほんとうに申し訳ないので、これ以上は書けませんけど、久し振りにだまし絵の妙味を見せてもらったぞ、と感じた本でした! 

道尾秀介さんは、今期の直木賞候補にも「カラスの親指」でノミネートされましたよね。「ラットマン」を買うとき、「カラスの親指」にしようか迷ったんです。近いうちに、「カラス」や、そのほかの道尾作品もぜひ読んでみたいと思います。

先入観というか、勝手な深読みはよくないですよね。あの人、わたしのこと怒ってる?なんて、勝手に思い込むと、その人の行動にいちいち思い当たることが出てきたりして。でも、ぜんぜん怒っていなかったことがあとでわかって、ばっかみたいと反省したり。先入観をもつなら、いいほうに持てばいいんですけどね。

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2009年1月20日 (火)

「すべてのサービスは患者のために」

メイヨー・クリニックって、聞いたことがありますか? アメリカでもっとも有名で信頼されている伝説的な医療機関です。本拠地のミネソタ州ロチェスター(フロリダ州とアリゾナ州にもブランチがあります)へは、全米から、そして世界中から膨大な数の患者さんがやってきます。

他の医療機関で治療不可能といわれた重症の患者さんがメイヨーで奇跡的に治ったという話は数知れず。治療を受けた患者さんの口コミでさらに多くの人々が治療を受けにやってきます。残念ながら命が助からなかった患者さんの家族も、メイヨーでの治療に感謝し、多額の寄付をしたりしています。といっても裕福な人々だけを診ているわけではなく、赤字を承知で低所得の患者さんの治療も行っているそうです。

今月発売になった拙訳書「すべてのサービスは患者のために は、そのメイヨー・クリニックから、サービスの真髄を学ぶという本です。医療機関をモデルとしていますが、医療の本ではありません。どのビジネスにも通じる「顧客(患者)第一主義」こそが、サービスの基本であり、ビジネスの長期にわたる成功のカギだと述べられています。これは、メイヨー・クリニックのような巨大組織にかぎらず、いやむしろ、中小の組織こそもっとも大切にしなければならない理念ではないでしょうか。

メイヨー・クリニックのような100年以上もトップを走りつづけている医療機関はほかにはほとんど見当たりません。本書を読んでいると、その成功の秘密が解き明かされていき、なるほどなあと心から納得してしまいます。目先の利益を追うのではなく、顧客(患者)が必要としている質の高いサービス(医療)を顧客の求めている形で提供する努力を怠らないことこそが、ビジネスの基本なのだなと思いました。長く続く組織にはそれだけの基盤があるんですね。

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2008年12月29日 (月)

今年のクリスマスプレゼントの一冊

Dsc01023 以前にもブログに書きましたが、わたしは毎年、その年に出た注目作品を自分へのクリスマスプレゼントとして買っています。今年のプレゼントは、これに決めました。道尾秀介さんの「ラットマン」。今年はけっこう迷って、なかなか決まらず、25日にようやく買いました。

貴志祐介さんの「新世界より」と最後まで迷ったのですが、「新世界より」が上下二巻だったので、こっちにしました。昨年、上下二巻のを買って、あんまりおもしろくなかったので。

道尾秀介さんの本も、貴志祐介の本もまだ読んだことがありません。楽しみです。「新世界より」もいつか読もうっと。

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2008年12月10日 (水)

紀伊國屋書店「2008年書籍年間ベストセラー」

紀伊國屋書店の「2008年書籍年間ベストセラー」が発表になったという記事をネットで見つけました。

わたしは前から書いてますように、そんなにたくさん新刊は買いません。でも、この記事によると、文庫・コミック・学習参考書を除く総合部門のトップは「夢をかなえるゾウ」、文庫部門では「容疑者Xの献身」(東野圭吾著、文藝春秋)、「チーム・バチスタの栄光」(海堂尊著、宝島社)の上下巻がベスト3だそうで、くしくも、この三作品を全部もっていました。ゾウと容疑者Xはモービーのおすすめにも入れてるしbleah (トーハンの文芸書年間売上ベスト3は「流星の絆」「聖女の救済」「ガリレオの苦悩」と東野さんのひとり勝ちだったそうです)

この季節になると大型書店では、「このミス」のベスト10とかが目立つところに並べられていますよね。わたしは、毎年自分へのクリスマスプレゼントとして、こうした本の中から一冊選んで買っています。いちばん最初に買ったのは横山秀雄さんの「クライマーズ・ハイ」でした。これはすごく面白くて、しばらく横山さんにはまりました。「容疑者X」も、「数学的にありえない」もこうした自前のクリスマスプレゼントとして買った本でした。

今年は、東野圭吾さんの「聖女の救済」にしようと思っていたのだけど、娘に早く買おうよとせっつかれ、つい秋のうちに買ってしまいました。ネットの読者評などはすごくよかったですが、わたしとしては「容疑者X」には及ばない気がしました。たぶん犯人に感情移入できなかったせいだと思います。というわけで、今年の一冊はまだ何にするか決めてません。みなさま、今年の新刊の中でお勧めの本があったら、コメントで教えていただけるとうれしいです。

現在の候補は夢枕獏さんの「東天の獅子」なんですが、武道家の話というのがちょっと不安材料です。夢枕さんの「陰陽師シリーズ」、「神々の山嶺」、「シナン」、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」は大好きなんですが、夢枕さんは多作で、中にはあまり好きでないタイプの小説もあるため、買うとなると迷ってしまいます。

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2008年11月27日 (木)

レッドデータガール&荻原規子さん

次の作品がとても待ち遠しいという作家がいます。その筆頭は藤原伊織さんだったのですが、残念ながらお亡くなりになってしまい、次の作品がなくなってしまいました。藤原さんの作品については、いずれ熱く語りたいと思っていますが、いまは下の娘も藤原さんのファンにしてしまったので、ふたりで「イオリン」談義をしています。

荻原規子さんも、次の作品が出るのを楽しみに待つ作家です。「レッドデータガール-はじめてのお使い」を昨晩11時半に読み始め、つい全部読んでしまいました(睡眠不足なり)。荻原さんの作品はヤング向けなので、フリガナなんかふってあったりしますが、じつにおもしろいです。今回は設定は現代だけど、姫神とか山伏とか出てくるファンタジーです。レッドデータガールって妙なタイトルだなあと思いましたが、「レッドデータ」って絶滅危惧種の情報が書かれた「レッドデータブック」からきてるのですね。なるほど「絶滅危惧少女」か。とても納得。もちろんこの一冊だけでも十分堪能できたけど、ここで完結するわけじゃなさそうで、「続きが読みたい!」と欲求不満がたまるのが、この本の欠点ですね。

荻原規子さんとの最初の出会いは「樹上のゆりかご」でした。都立高校が舞台のミステリーで、なんか自分の高校時代と重ね合わせたりして、とても面白い小説だと思いました。それから同じ作家の作品が読みたいなと思って、勾玉三部作(空色勾玉、白鳥異伝、薄紅天女)を読み、すっかり大ファンに。今回の「レッドデータガール」もそうですが、荻原さんの作品は、今年の夏に旅行した熊野がおおいに関係していて、スケールが大きく、しかも日本の神話や伝説とかを題材にしていてすばらしい作品だとひたすら感心しています。こういうイマジネーションの豊かな方ってほんとうにすごいと思います。

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2008年11月21日 (金)

数学本ブーム

数学の本がブームだそうですね。ぜんぜん気づいていなかったのですが、仕事の関係でそんな話を聞き、ちょっとリサーチしてみたら、たしかにそうらしいです。今月号のニュートンも「虚数」特集でした。そういえば、2,3年前に「博士の愛した数式」という本がベストセラーになり、映画化もされましたね(本も読んだし、映画も見ました)。あのころからブームが始まっていたのだろうか。「インド式計算ドリル」が大ベストセラーだってことは知っていたけど、数学がブームだったとは! いやはや迂闊でした。

2年ほど前に「数学的にありえない」(アダム・ファウラー)という本を読みました。これは久しぶりに痛快なくらい面白いミステリーでした。数学の天才が予知能力にめざめ、悪い科学者たちに追われるようになる。彼の双子の兄、CIAの暗殺者、一般人、ロシアのマフィアなどが入り乱れ、多彩な人物に目がくらんでいるうちに、やがてすべてのピースがぴたっ、ぴたっとはまりはじめ、奇妙なエピソードや無関係に思われた事件がすべてつながり、ラストに向かって突き進む、という秀逸な作品でした。物理や数学の理論もあちこちで語られるので、そういう蘊蓄が好きな方も、きっと楽しんでいただけると思います。モービーのお勧め本です。

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2008年11月15日 (土)

図書館ピンチ!

28万冊いずこに…全国公立図書館で不明、被害4億円超す (読売新聞)9日(日) 」という記事を見て、びっくりしました。黙って図書館の本を持って行ってしまう人がそんなにたくさんいたなんて。たいへんな被害ですし、その本を読みたいと思っていた人たちも読めなくなってしまいます。

かと思えば「図書館の憂鬱 (産経新聞)10月17日(金)」という記事のように、書き込みや切り抜きをする人も多くて、あとでその雑誌を見た人はとても不快な気分になるといいます。 わたしがいつも利用している図書館は、この記事のようにひどくはありませんが、やはりときおり切り抜きや書き込みはありますね。それを見るたびに、図書館の雑誌の切り抜きを持っていて楽しいのだろうかと考えます。

わたしは以前から何度も書いているように、図書館へヴィーユーザーです。アメリカに住んでいるときもものすごく頻繁に利用させていただきました。だから、とても図書館に感謝しているし、これからもたくさんの人が気持よく利用できることを願っています。心ない行為が減ってくれることを祈ります。

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2008年10月27日 (月)

三国志

来年10月から、三谷幸喜さんの脚本でNHKの人形劇が復活するそうです。人形劇といえば「ひょっこりひょうたん島」。なつかしーconfident。あたらしい人形劇は「新☆三国志」だそうです。

ちょっと三国志ブームって感じですか? 金城武さんやトニー・レオンさんが出演する、ジョン・ウー監督作品「レッドクリフ」が、11月に封切られるので、そのせいかなあ。このあいだNHKで「40分でわかる三国志」みたいな番組をやっていたので見ました。コンパクトによくまとまっていて、そうか、こういうことだったのねと納得。けっきょく、三人の英雄もその子孫も天下を取れなかったというのが興味深いです。その番組では、中国制作と思われるテレビ番組とかの映像が随所に使われていたのですが、一部の映像にトニー・レオンが映っていてびっくり。最後のテロップで映像提供に「レッドクリフ」も入っていた!

三国志は吉川英治さんのは読んでいませんが(とても長かったので)、柴田錬三郎さんの「英雄ここにあり(柴錬三国志)」なら読んだことがあります。面白かったですーgood、ほんとに。諸葛孔明中心の話なんですけど、孔明さん頭脳抜群で、奇跡まで起こしてスーパーマンみたいです。関羽と張飛は劉備玄徳への思いが熱く、ターミネーターばりに強くて最後までめちゃかっこいいです。ページをめくる手が止まらない本でした。劉備玄徳は、いい人すぎちゃってイライラしますけど。

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2008年10月25日 (土)

ゴールデンスランバー&死神の精度

ブログに「アヒルと鴨のコインロッカー」のことを書いたせいか、また伊坂幸太郎さんの本が読みたくなって、「ゴールデンスランバー」と「死神の精度」を読みました。

「ゴールデンスランバー」は伊坂調を十分残しながらも徹底的にエンターテインメント性を追求した作品。おもしろいです。ノンストップで読めてしまいます。伊坂さんの作品って、バックグラウンドに音楽が流れているような感じがするものがありますよね。今回はビートルズ。わたしは以前にも書きましたが、とくにビートルズは好きでないので、ゴールデンスランバーと聞いても、すぐにビートルズの曲とは思いませんでした。でも、アルバム「アビーロード」に収録されている曲だったんですね。アビーロードは兄が発売されたばかりのLPを持っていました。四人が通りを渡っている写真がジャケットだった。あのアルバムをポール・マッカートニーがどんな気持ちでつくったかというのがこの本に書いてあって、妙にセンチメンタルになってしまいましたよ。

あと、主人公が彼女にふられる場面も、なんかぐっときちゃったなあ。板チョコレートを半分に割って、それを彼はどうしたでしょうか? 書きたいけど、まだ読んでいない人のために伏せておきます。

映画「死神の精度」は金城武さん主演の作品にしてはめずらしく見逃していました(金城さんの作品は昔の超オバカ作品を含めて、かなりたくさん見てます)。結局また本のほうを先に読んじゃいましたけど、なーんか、金城さん、死神にぴったりだなー、映画見たいな~と思いました。伊坂さんの作品って、わたしが読んだ作品はどれも「死」がちらつきます。今回はちらつくというより、「テーマ」ですけど。それも、意外にあっけらかんと、からりと、ときに理不尽に死ぬ。そういうのが伊坂さんの死に対する考え方なのかな。

で、結局、DVDを借りてきて、映画、見ちゃいました。「死神の精度」は短編集なんですけど、そのうち、面白いなあと思った三篇が映画のエピソードになっていて、やっぱりなとにんまり。金城さんの死神ぶり、笑えます。「ミュージック」を聞くシーン、かわいいです。ただ、本では、ヤクザさんはもっとクールでかっこよかったし、老女はあんなに「おばあさん」っぽくしゃべってなかったなあ。そこがちょっと残念でした。

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2008年10月23日 (木)

老舗企業大国ニッポン-千年、働いてきました

モービーのお勧めリストの「ものづくり魂」のことろに、「本田、井深、盛田三氏のようなのもづくりの天才はもうあらわれないのでしょうか?」なーんて、失礼なことを書いてしまいました。日本にはいっぱいいらっしゃるんですね、ものづくりの天才たちが!

だいぶ前に、ゴンザレスさんがコメントで紹介してくださった野村進氏著「千年、働いてきました」を読みました。いやあ、わたしは「目からうろこ」という言葉はあまり好きじゃないので、あまり使わないようにしているのですが、ほんとに「目からうろこ」ですよ、この本。のっけから、千年以上つづいている老舗があるのは日本だけと聞いてびっくりし、またケータイのきわめて貴重な部品のいくつかは日本の老舗企業が開発していると知り、さらにびっくり。章を追うごとに驚くことばかりです。

以前から、日本テレビの「未来創造堂」という番組で、あのサッカーの試合とかで使っているホイッスルとか、化粧のファンデーションに使うスポンジなどさまざまな商品が日本から世界に発信されているというのを見ていて、たいへん興味を持っていました。「千年、・・・」を読むともっともっと知らないところですばらしい技術が輸出されていることがわかります。こういう切り口の本をお書きになる野村氏にもあらためて脱帽です。野村氏の「調べる技術・書く技術」を読んでいるので、この本は読みやすい新書にまとめられているけれど、じつは、この何十倍もの資料やエピソードがあるのに、野村氏がその中から厳選してほんとうに書きたいところだけ書いていらっしゃるのだろうなと思います。だから、中身がぎゅっとしまっていて、一行一文も無駄なところがないかんじです。

興味深かったのは、このような世界をあっと言わせるような技術が老舗企業からは生まれるのに、なぜ日本の大企業から生まれないのかという理由でした。大企業は株主の機嫌をうかがわなければならないので、長期的な研究というのができにくいのだそうです。一方老舗企業のほうは、株式も上場していない会社が多く、社長がやりたいと思えばそれが通ってしまう。さらに老舗は長い伝統をもつだけあって、自然や社会と調和する技術をもち、また、それをめざしている。もちろん、小さい会社なので苦難は多いと思いますが、だからこそ、すばらしいものが生まれるのだそうです。(短期的な)成果主義一辺倒というのも、考えなおす必要があるような気がしました。

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2008年10月17日 (金)

アヒルと鴨のコインロッカー&伊坂幸太郎さん

最近、原作を映画化した映画について書く記事が多かったのですが、となると、「アヒルと鴨のコインロッカー」について書かねばなりますまい!

人気書籍を映画化した作品って、「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめ、なかなか見る人の目が厳しくてたいへんですよね。わたしなんか、あの不朽の名作といわれている「風と共に去りぬ」だって原作のほうがやっぱり断然おもしろいと思ってますもん。

でも、映画「アヒルと鴨のコインロッカー」には感動しました。もちろん原作を読んでから見ましたけれど、「小説」ならではのトリックをあれだけうまく映像化するなんて、びっくりしました。そして、わたし個人としては小説でちょっと冗長に思われた部分がそぎ落とされていて、かえって映画のほうがよかった気がしたくらいでした。濱田岳さん、瑛太さん、松田龍平さんの三人は文句のつけようがないくらい適役でした。この作品で重要な役を果たすボブ・ディランの「風に吹かれて」、やっぱりいい曲ですねえ。高校生のころにはあの良さがわかりませんでしたけど。

伊坂幸太郎さんは、わたしにとって不思議な作家です。すごく好きともいえないし、嫌いというわけでもないけれど、なんとなく気になってまた読んでしまう。なので、何冊も読ませていただいています。とても頭がよくて、センスのいい人が、世の中を第三者的に見ている。でも、そこにそこはかとなくやさしさがあるんだけど、それをストレートに出すのは気恥ずかしいと思っているような、そんな作品なのじゃないかなあ、伊坂さんの小説って。

全部読んでいるわけではないですが、読んだ中では「終末のフール」が好きです。あと2年で地球が消滅するというありえない設定の中で生きる人々のストーリーの短編集ですけど、読み進むうちにそのありえなさが、妙に自然になってしまうから不思議。昔あこがれていた同級生に会いにいく女の子の話、自殺した妹のかたきを討ちにいく兄弟の話など、そのうちのいくつかのストーリーはとても感動的です。火の見櫓をつくるおじいちゃんもすてき。

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2008年10月16日 (木)

ものづくり魂+コクーンタワー(←オマケ)

わたしは故本田宗一郎さんのファンで、ときどき本田さんに関する本を読みます。先日、ソニー創業者の故井深大さんが、友人本田氏と相棒の盛田昭夫氏について書いたものをまとめた「ものづくり魂」という本を読みました。そしてあらためて、本田氏と井深氏のものづくり魂に感動してしまいました。

本田氏は自己宣伝なさらない方なので、あまり知られていませんが、数十年前に完全燃焼して有害な排気ガスを出さない無公害エンジンの開発を目指して成功したという話を読み、あらためて「おやじ」のすごさを痛感しました。また、井深氏も自慢しない人なので、あまり知られていないことだと思いますが、あの世界的な超ヒット商品ウォークマンのアイデアは井深さんのもので、試作品もご自身が手作りなさったそうです。電気技師としての腕も素晴らしかったそうです。

井深氏は晩年、子どもの教育に大きな関心をもち、いろいろと活動なさっていたそうです。この本の中で、子どもの教育についていちばん印象的だった部分を引用します。

「ちょっと理屈を言うようですが、人間というのは、大人でも子どもでも、自分が見たい、知りたいと思ったことが、簡単に手にはいってしまうと、それ以上、興味を持たなくなりがちです。なかなか手にはいらないからこそ、興味もますますつのってきて、実際に手にはいったときでも、もっと一所懸命やろうとするのです」

わたしが子どものころ、母がよく言ったものです。「お母さんが子どものころにはおもちゃはお人形ひとつしかなかったからそれを大事に大事にしていた。いまの子どもは何でも持っているから、おもちゃを大切にしないわねえ」。そして、わたし自身の子どもたちはわたしが子どものころよりももっと与えられています。もしかして、現代の親たちは子どもたちの想像力の芽を摘み取っているのかもしれません。

突然話変わって・・・

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昨日、久し振りに新宿西口というか、都庁付近を歩きました。やや、北京オリンピックの「鳥の巣」が縦向きに! とびっくりしたら、東京モード学園コクーンタワーだそうですね。

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2008年9月23日 (火)

犯人に告ぐ

きのうは雫井脩介さんの「クローズド・ノート」のことを書きましたが、そもそも「クローズド・ノート」を読んだきっかけは、同じく雫井さんがお書きになった「犯人に告ぐ」でした。とても面白いミステリーだったので同じ作者の本をさがして「クローズド・ノート」を読んでみたのです。そうしたら、作風がまったく違うじゃないですか。主人公は刑事から女子大生へ。しかも、女子大生の視線で描かれている美しいラブストーリー。ちょっとびっくりでした。

「犯人に告ぐ」は誘拐事件の犯人逮捕に失敗し、その上記者会見で切れてしまって左遷された刑事が、ふたたび凶悪な誘拐犯に挑戦するという話です。まあ、よくある話みたいなんですけど、異色なのは主人公がテレビのニュース番組を通して犯人に語りかけるという設定なんです。だから「犯人に告ぐ」なんですね。脇役の人物描写もよく、最後まで手に汗握ります。

とても好きな作品だったので、このあいだ、WOWOW制作の映画「犯人に告ぐ」もみました。子供たちをさそったら「つまんなそー」と断られたのですが、「20世紀少年のオッチョ役の豊川悦司が主演だし、30分見てつまんなかったらやめたら」としつこく言って一緒に見ました。そしたら、けっきょく最後までおもしろくて見てました。トヨエツよかったです♪

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2008年9月22日 (月)

万年筆&クローズド・ノート

先日、ある方からお葉書をいただいました。もっぱらメールでの連絡になっている昨今、手書きの葉書をいただくのはとてもうれしいものです。しかも、太字の万年筆で書かれています! 私自身は、うん十年前の中学入学時に万年筆を買ってもらったきりで、それがどこかへいってしまってからはボールペン一辺倒でした。それも、わたしは恥ずかしいくらい書き損じが多いので、ほんとうは鉛筆がいちばん。消しゴムで消せますから。なので、ワープロはとてもありがたく、いきおい、なんでもかんでもメールということになっています。

でも、万年筆へのあこがれはいつもありました。とくに、雫井脩介さんの「クローズド・ノート」を読んだときは、すぐにでも伊東屋に走って行って、万年筆を買いたくなりました。「クローズド・ノート」は最近映画化されて、沢尻エリカさんの話題だけが取り上げられ、映画自体は影が薄くなってしまった感じで、お気の毒な気がしました。映画も見ましたが、個人的にはやはり小説のほうがよかったです。でもそれは、たいていの原作ものにいえることなので仕方がないことと思います。伊勢谷友介さんは、「ハチクロ」に続いての芸術家の役ですけど、ご自身もたしか美大出身だそうで、よく合っている感じでした。あのAQUOの宣伝の人と同一人物とは思えないかっこよさですねhappy01

話を戻しますが、「クローズド・ノート」は小説自体ももちろんすてきなんですが、とにかく前半の万年筆のうんちくがすばらしい! とってもとっても万年筆を使いたくなります。それも、何本か持って、使い比べてみたい、という気持ちにさせられます。読者をそう言う気持ちにさせる作家ってすごいなあと、妙に感動しました。

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2008年9月20日 (土)

チューバはうたう

久しぶりに純文学を読みました。現役の30代の小児科医兼作家の瀬川深さんがお書きになった作品「チューバはうたう」です。太宰治賞受賞作品。タイトルからして心惹かれます。

若いころはけっこう純文学系を読んでたんですけど、いまはエンターテインメント系がほとんど。○○賞とかとった文芸ものを読んでも最近はあまりピンとこなくて、自分が年とったせいかなと思っていましたが、この本はよかった!

目立たない楽器、チューバを吹くことが人生の欠かせない一部になっている若い女性のモノローグでつづられる物語です(作者は男性ですけど)。言葉のリズムがすごく美しく、豊かな感性にひきつけられました。ラストのライブ演奏の場面は圧巻で、別に悲しくもないのに妙に感動して、気づいたら涙がこぼれていました(映画の予告編見ただけでも泣ける、涙腺が超弱いわたし・・・)。

ゴールデンウィークに有楽町の国際フォーラムで開かれた音楽のお祭り、ラ・フォル・ジュルネに今年も行きました。もちろん有名な音楽家の演奏は素晴らしかったのですが、公共スペースでやっていた無料のコンサートが実はいちばん印象に残りました。ストリートでジャズをやっている4人組(サックスとドラム)の、シューベルトをジャズ風にアレンジした曲。しびれました。「チューバはうたう」を読んで、そのグループのことを思い出しました。やはり中にひとりだけ若い女性が混ざっていたのです。みんなとても楽しそうに演奏していて、すてきでした。音楽は、ジャズは、彼らにとって人生の一部なんだろうな、きっと。

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2008年9月17日 (水)

流星の絆&東野圭吾さん

今年の母の日に、子どもたちがプレゼントしてくれた「流星の絆」。わたし的には東野圭吾さんのベストは「白夜行」なので、それにはちょっとかなわないと思いましたが、最後まで一気読みしてしまう面白いエンターテインメント小説でした。

この小説が、秋からテレビドラマ化されるそうですが、主演の三人兄弟が二宮和也さん、錦戸亮さん、戸田恵梨香さん、となかなかグッドな配役です。とくに錦戸さんと戸田さんは小説のイメージにぴったりだな。二宮さんは上手な俳優さんなので、きっとすてきなおにいちゃんを演ってくれると思います。あとの重要人物は三浦友一さんと要潤さん。これもなかなかいいです。

そして、今回とても楽しみなのが、名作ドラマ「池袋ウェストゲートパーク」「タイガー&ドラゴン」の名コンビ、磯山晶さんと宮藤官九朗さんがプロデュースと脚本を担当なさっていること。これは見逃せません! 作品の主のテーマはけっこう重いのですが、クドカンが脚本なら、兄弟の詐欺行為のあたりを面白おかしくつくってくれるんじゃないかなあなんて、勝手に想像を膨らませています。

東野さんの「容疑者Xの献身」もすごく好きな作品です。もうすぐ映画が公開ですね。容疑者Xを堤真一さんが演じるそうです。小説ではXの風采が上がらないところがツボなんで(ラスト、わたしはおいおい泣きましたcrying)、堤さんはちょっとかっこよすぎるような。でも、堤さんもお上手な俳優さんなので、また別の味わいが出るのかも。

ところで東野さんの小学校から大学までをつづったエッセイ「あの頃ぼくらはアホでした」もすっごく面白いので、オススメでございます。友人が、「これ面白いから読んで~」と貸してくれたのですが、貸してくれる時に内容の半分以上をしゃべってくれたので(それだけ面白かったということです!)、ネタバレバレ状態で読みましたが、それでも面白かった。とにかく笑えます。

やはりこういう人間性豊かな(というか、アホで破天荒で、ちょっとアブナイ)青春時代を送ったからこそ面白い小説が書けるんだな。同じ環境でもきっと楽しめない人もいいると思うんですよ。かなり荒れた中学だったみたいだから。でも、その中でたくましく生きちゃう人だからこそ、なんだろうな、なんて。この本を読んであらためて思いましたが、椎名誠氏もそうですけど、バンカラな青春時代を送ってもやっぱりものを書く人って本が好きなんですね!

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2008年9月10日 (水)

調べる技術・書く技術

ノンフィクション・ライター野村進氏の「調べる技術・書く技術」(講談社現代新書)を読みました。野村氏のお書きになったノンフィクション自体はじつは読んだことがなかったのですが、この本に感銘を受け、いつかぜひ読んでみたいと思いました。志の高いライターがいかにして調査し、人に話を聞き、構想を練り、そして作品を書き上げるか--その過程のすべてがわかる本です。ライター志望の方は必読です。おもしろいノンフィクションとそうでないものの差は、どこに切り口を見つけるかにかかっているのだなとあらためて思いました。ルポルタージュの例として、2本、ご自分の作品を本書の中で紹介しておられますが、これもとても読み応えがありました。

いろいろ書きたいことがありますが、野村氏がたくさん調べたからといってそれをすべて書いても面白くない、ひとつに的をしぼったほうがいい、とおっしゃっていたので、わたしもこの本の中で特に印象に残って、翻訳との関連を感じた点を述べます。ノンフィクションでときどき、中心人物が「・・・と思った」というような書き方がされていることがあります。野村氏はこれは違うんじゃないか、いくら綿密に調査しても、その人の内面までははかり知ることができないと考えておられます。だから「故人の心理描写をする際には、本人の発言記録がないかぎり、推測の形でしか表現しない」のだそうです。

科学関係の本や記事や論文には、can、could、may、mightが頻出することが多いのですが、これをいつも「ありうる」「可能性がある」「かもしれない」と訳すと、すごく読みにくい文章になってしまいます。でも、著者は断定はしていなくて、こうも考えられると述べているわけです。科学の世界では、明日には違う結果がでて既存の説がひっくり返ってしまうこともあるし、たとえ反証がなくても、ほんとうに正しいかどうかは神のみぞ知るです。だから、やはりしつこくなってもcanとかを訳さなければならないとは思うのですが、読みやすさを考えると、どこまでやったらいいのかいつも迷います。きっとこれからも悩みながら訳文を書いていくのだろうな。

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2008年9月 7日 (日)

Weekly Quote(10)-アニメ

まだ見てませんが、「崖の上のポニョ」が大ヒット中ですね。わたしは宮崎駿さんのアニメでは、「千と千尋の神隠し」と「となりのトトロ」が大好きですし、「風の谷のナウシカ」をはじめて見たときはたいへん衝撃を受けました。以前から宮崎駿さんやジブリに興味があったので、ジブリの名プロジューサー、鈴木敏夫さんがお書きになった「仕事道楽-スタジオジブリの現場」(岩波新書)を読みました。鈴木氏の語り口のおもしろさにひきつけられ、そして登場してくる才能あふれる人々のすごさに圧倒され、あっという間に読了してしまいました。ジブリがどうやってできあがったか、数々のアニメが生まれた背景、宮崎駿さんという人物、等々、興味は尽きません。

宮崎駿氏がとびぬけた才能をお持ちで、妥協をしないものすごい努力家であることは想像がつきますし、それがジブリの原動力であるのだと思います。でもこの本を読んで、それにプラスして、才能ある人々の活発なディスカッションも大切な要素なんだと知りました。「…みんな正直で、いたずらっ子で、言いたいことを言う。そしてアイデアマンでもある。何か共通項がありますね」と鈴木氏はお書きになっています。そういうやりとりの中からジブリが、そしてジブリ作品が生まれてきたんだなあ。やはり人と人のかかわりって大切です。

で、今週は宮崎駿さんのQuoteです。さすが世界のミヤザキですから、英語のQuoteのサイトにちゃんとありました。でも、訳すと「こんなふうには言っておらん」としかられそうな気もするので(まあ、わたしのブログを宮崎氏がごらんになることはまずないとは思いますが)今週は日本語訳はつけません。

Is someone different at age 18 or 60? I believe one stays the same.
--Hayao Miyazaki

I never read reviews. I'm not interested. But I value a lot the reactions of the spectators.
--Hayao Miyazaki

「第65回ヴェネチア国際映画祭で、『崖の上のポニョ』が映画誌「CIAK」による観客賞を受賞した」とインターネットの記事にありました。↑このQuoteからすると、宮崎氏にはすごくうれしい賞なのかも。

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2008年8月26日 (火)

一瞬の風になれ&しゃべれどもしゃべれども

8月24日のブログで佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」にちょっと触れました。大ベストセラーですからすでに読まれた方も多いと思いますので、わたしがわざわざ書くこともないんですが、北京オリンピックで陸上競技を見てたら、どうしても書きたくなりました。この本では、天才ランナー連くんが、個人競技よりも親友の新二と走る四継(よんけい=400メートルリレー)を大切にするんです。そして、そのチームワークっていうのが、バトンまわしも含めてとてもデリケートかつ重要なんですね。今回のオリンピックの日本のリレーチームからは、ほんとうにいいチームであることが伝わってきました。それだからこそ見事な結果を出せたのでしょう。

佐藤多佳子さんは、一作ごとに違う分野の題材で書いておられ、才能のある方だなあといつも思っています。ヘミングウェイが、「現実よりも本当らしく書けるのが小説家だ」みたいなことを言ってますが、佐藤さんも、ランナーの世界や、落語の世界、スリ(犯罪の)の世界などを、現実さながらに描いてしまうんですね。そのうえストーリーは面白いし、会話が生き生きしてますもん。すごいとしか言えません。

わたしは別に落語ファンじゃありませんが、「タイガー&ドラゴン」と「ちりとてちん」が大好きな、「落語もの」ファン。当然、佐藤さんの「しゃべれどもしゃべれども」も大好きな本です。「一瞬の風になれ」同様、主人公たちの成長物語ですけど、読んでいてほんとうにさわやかだし、おもしろくて最後のページをめくるまで本を置くことができませんでした。こちらは、ほのかなラブストーリーがあるんですけど、ふたりの不器用さがとても愛らしく、胸きゅんです。たいてい、原作を読んだあと映画を見るとがっかりするのですが、「しゃべれどもしゃべれども」は映画もよかったです。六本木の小さな映画館で観たのですが、落語家さんなのか、粋な着物姿の男性も見に来ていました。

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2008年8月22日 (金)

自然への介入はどこまで許されるか

北京オリンピックに燃えた(ている)この夏。仕事も忙しかったので、ほとんど読書できていませんが、「自然への介入はどこまで許されるか-事例で学ぶ環境倫理」(クリスティン・E・グドーフ/ジェイムズ・E・ハッチンソン著 千代美樹訳、日本教文社)は読みごたえのあるすばらしい本でした! 目次をご紹介します。

環境倫理学の理論
第1部 生態系の維持と管理(2章:怒涛に架ける橋―エヴァグレーズの追いつめられたコミュニティ。3章:健全な生態系か、人間の利益か?―POP廃絶条約。4章:盗まれた心―危機に瀕した生態系と危機に瀕した文化。5章:ジャワの森は消滅する運命にあるのか?―自然保護と人口圧力。6章:生き埋め―未来の世代と放射性廃棄物の永久処分)
第2部 生態系の再生と再創造(7章:生態系の応急処置?―傷ついたサンゴ礁の再生。8章:流れる川、堰き止められる川―自然の流れか水力発電か。9章:自然も砂漠をつくる―中国の砂漠化対策;再野生化―損なわれた生態系の回復。10章:再野生化-損なわれた生態系の回復)
第3部 生態系への人為的介入(11章:生物多様性の促進?―遺伝子組み換え食品。12章:狩猟は環境を守る?―自然のなかの人間。13章:人間と動物の交配か、畜産技術の進化か―異種移殖)

この本は、世界各地で実際に起こっている環境問題を、団体名や登場人物の名前は架空にした短い物語形式で紹介したのち、詳しい解説がついていて、大学生や高校生などにその問題について考えてもらおうというものです。物語はとてもわかりやすく、中心となる人物が、さまざまな利害や主張の中間に立って葛藤します。人間の利益のための自然破壊は絶対にやめるべきなのか、また、人々の生活や幸福や習慣を守るためにはそれはある程度やむをえないことなのか? 非常に考えされられます。一概に開発や環境破壊を悪とは言い切れないところもあり、どちらの主張にもうなずかざるを得ない。でも、答えを出さないわけにもいかない・・・。非常に深いです。学生さんのみならず、一般人のわたしたちも読む価値が非常にある本だと思いました。

すべての事例が、現在報道されているニュースに通じていますので、切実に伝わってきます。ちょっと暑ければエアコンのスイッチを入れる、ペットボトルの飲料をすぐに買う、といった甘えた生活をしている自分が環境問題を論じることなんかできないなあとしみじみ感じました。とはいえ、自分にできることはほんの微々たることでもやっていきたいとも思ったしだいです。

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2008年7月31日 (木)

夢をかなえるゾウ

書籍にたずさわる仕事をしていますが、山のように蔵書があるわけではありません。だいいち置場がないです。どうしても読みたいものや参考書などは買いますが、読みたい本はほかにもたくさんあります。そこで、いつも図書館のお世話になっています。ベストセラーはリクエストしても1年以上待たされますから、「バカの壁」とか「国家の品格」はヒットした翌年に読みました。だいたい、少々ひねくれたところがあるので、みんなが買う本はわざわざわたしが買うこともないなと思ってしまいます。

今年前半のベストセラー第一位は「夢をかなえるゾウ」だったそうですね。ふつうなら買わないんですが、友人が誕生日にプレゼントしてくれたので、旬のベストセラー、読みました! 大阪弁のゾウの形をした神様ガネーシャが、いい人だけど、漫然と毎日をすごしている若者にとりついて(?)、成功する道を指南するという本です。けっこうおもしろくて、さらりと読めるし、随所に「うん、うん」とうなずけるところもあって売れる理由がわかります。

第一、神様がわがままで、自己鍛練ができないところがかわいい。きついこと言っても、大阪弁ってなんかユーモアがあるっていうか、いいですよね。挿絵のゾウがまた、イメージにぴったりだし。いま、気づいたのですが、神様のガネーシャはものすごくダジャレが下手なんだけど、「夢をかなえるゾウ」って、「夢をかなえるぞ(う)」のダジャレだったのかな?

大人は「夢を描け」と若者をさとしますけど、ガネーシャに言わせれば「(そうすると)夢を想像することに逆にプレッシャーを感じたりすんねん。でも本来の夢って違うねん。誰にいわれれるでもなく、勝手に想像してワクワクしてしまうようなんが夢やねん」。子どもたちがそういう夢がもてるといいなと思うし、自分も年をとっても、夢にワクワクできる人間でいたいものです。  

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2008年7月26日 (土)

夏休みの自由研究-日経サイエンス9月号特別付録「親と子の科学の冒険」

Scan10010sきのうご紹介した日経サイエンス9月号には、特別付録「親と子の科学の冒険」がついています。これがとてもいいんです。目次はこちらから。

子どもの夏休みの自由研究にすごく役立ちそうな内容ばかりです。

記事は、作家の荒俣宏さん、多摩動物園の成島悦雄さん、生物写真家の奥山英治さんなどがお書きになっていて、よみものとしてもとても面白いです。ただ動物園に行くだけじゃなくて、しっぽに注目してみようとか、磯で観察すると東京湾でも熱帯魚の赤ちゃんがみつかるかも、とか、カエルやカブトムシを飼ってみようとか。やってみたいことばかり。

じつは、わたしは科学が大好きなので、子どもが小さいうちは、上記のようなことはだいたい体験しました。だからよけいに、この別冊が面白いと感じたのかもしれません。自分が小さかったとき、こういうことをしてみたいなあと思っていたけれどできなかったことを、子どもといっしょにやってみたというのが本音のような気がします。残念ながら子どもは、わたしほど喜んでいなかったとみえて、科学好きには育ちませんでした。とはいえ、いろんなことをいっしょに体験できたことは楽しい思い出として残っています。

クワガタやカブトムシを何匹も飼ったこともあります。カブトムシは雄雌まぜて飼育箱で飼っていて、秋に成虫が全部死んでしまったあと、土を捨てようとしたらウジ虫みたいなのが! 科学は好きだけど本当は虫類が苦手なわたしは「きゃー!」だったのですが、よく見るとカブトムシの幼虫らしい。そこでよくわからないので、土を湿らせて翌年まで様子を見ました。そしたら、カナブンよりちょっと大きめの小さなカブトムシが土からでてきました。当時、子どもたちは虫類が大好きだったので大喜びでした。

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2008年7月25日 (金)

日経サイエンス9月号-生物の形を決める遺伝子スイッチ

7月25日発売の日経サイエンス9月号に翻訳協力した記事「生物の形を決める遺伝子スイッチ」が掲載されていますので、内容をちょっと紹介させていただきます。

人間やネズミやゾウは見た目がぜんぜん違いますが、その違いはどうして生じるのでしょうか? 一昔前なら「ヒト遺伝子」とか「ゾウ遺伝子」なんてのがある、と考える人もいたかもしれません。でも、実際には、見た目がまったく違う動物でも、もっている遺伝子のセットはよく似ているのだそうです。受精卵から胎児になり、そして成長していく過程で、多数の遺伝子がいつどこで働くかによって、さまざまな形態が生じるのですが、そういうことをトータルにコーディネイトしているものは何なのでしょうか? 長い長いDNAには遺伝子以外の一見無駄に思われる部分がたくさんあります。じつは、そこに遺伝子のスイッチの働きをする配列があるというのが、この記事の概要です。

558092 もう少し詳しく知りたい方は、日経サイエンスホームページをごらんください。各号のダイジェストをpdfファイルで無料ダウンロードできるサービスもあります!

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2008年7月15日 (火)

英語の会話と発音の話(1)-アイガーラゴウ

これから何回かにわけて、英語の会話と発音について書こうと思います。でも「こうすれば会話がうまくなる」みたいな話じゃないですよ。わたしの英会話力は、日常会話には困らないけど、文法はあやしいし、発音だっておしてしるべし、といった程度です。ただ、アメリカに住んでいたころ、実際に毎日英語に接してみて、いろいろ考えたことや知ったことがあったので、それを書いてみたいと思います。

最近読んだ、池谷裕二さんの「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則(ブルーバックス)」という本はとてもアイデアが斬新で、面白かったです。詳しい内容については池谷裕二さんご本人のHPのなかの「カタカナ英語でいいんじゃない?」で読んでください。とにかく、いままでの「アイブ・ゴット・トゥー・ゴー」式の書き方はやめて、「アイガーラゴウ」みたいに、聞こえたままの英語をカタカナにしてみようと池谷さんはお考えになったんですね。ご存知の方も多いと思いますが、池谷さんは本やエッセーもたくさんお書きになっている脳神経生理学者。なので、語学学習に関する脳神経学的な話も随所に書かれていてすごく興味深かったです。

それに何といっても、こんなに頭のいい人でも英会話には苦労するんだと知ると、そうか自分だけじゃないんだと思えて気が楽になります。わたしの友人の中にも、この本を信奉している人がいて、「理想を求めることは潔くあきらめよう。どうせ、私たちには英語を発音するための脳回路がないのだから」というくだりを読んでほっとしたそうです。日本人発音だろうとなんだろうと、要するに通じればいいんですよね。

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2008年7月 9日 (水)

月刊バレーボール8月号臨時増刊

本日、月刊バレーボール8月号臨時増刊が発売になりました。植田ジャパン特集号ですよ! さっそく買ってきました。OQTの取材から、各選手ごとの記事まで、盛りだくさんです。越川選手、ゴッツ選手、山本選手の私服姿の写真もありますが、ゴッツ選手の黒シャツ、黒スラックスの姿にはびっくり。ユニフォームのときには名前のとおり、ごっつく見えるのに、私服だとすごく足が長くてスマートなんですね(妙なことに感心している)。

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2008年6月22日 (日)

バレーボールの記事

昨日、書店にいったついでに、『復活』の市川忍さんが Number7月3日号にバレーボール世界最終予選の密着レポートをお書きになっているということなので、買おうかなと雑誌コーナーをのぞきました。そしたら、 月刊バレーボール7月号、すごいです、男子のほうが巻頭に特集されていた! いつもは男子のページは少なめなんで、図書館から月遅れのを借りて読むんですが、Numberはやめて月刊バレーボール買ってきました。

今月号は男子バレーのファンにはたまりません! もちろん男子世界最終予選の特集もたっぷりだし、パナソニックパンサーズの南部監督(ファンです)と松平康隆さんの対談も!試合や祝勝会の写真も隅々まで見ると、選手の皆さんの生の表情が見れてとても面白いです。

前回のアテネ予選を逃した5人の選手の真剣なプレーぶりは試合を見るだけで伝わってきましたが、試合以外の場所でもこの方たちの努力があったんですね・・・。北京が決まった直後、「ツマさんと抱き合って泣いた」という山本選手の言葉が印象的でした。

Numberの記事のほうは、今日、図書館へ行って読んできちゃいました(買わなくてごめんなさい)。さすが市川忍さん。分析がすばらしいです。イタリア戦でマッチポイントを握りながらも、イタリアに7点連取された理由も明確にわかりました。バレーって、知れば知るほど面白いスポーツですね。それを素人にもわかるように説明してくださる市川さんのようなライターさんたちに心から感謝したいです。

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2008年6月20日 (金)

こころのサイエンス04号(2)-頭のよい子に育てる秘訣は?

子どもの絵をほめるとき、「絵がほんとにうまいのねえ」というのと、「上手にかけたわね。表情を細かく描いたところがすごくいいわ」というのでは、どちらが子どもを伸ばせるでしょうか?

昨日ご紹介した日経サイエンス8月号臨時増刊「こころのサイエンス04号」には、翻訳協力させていただいた記事がもう一本掲載されています(「頭のよい子に育てる秘訣は?」)。上記の質問の答えは、その記事に書いてあります。子どもにやる気を起こさせる声かけの例ものっています。

もともと子どもの才能や知能には個人差があるけれど、せっかく才能があってもそれを生かせず勉強を放棄してしまう子もいれば、どんどん伸びていく子もいる。そうした違いはどこから生まれるのでしょうか。あるいは最初は勉強を投げていた子でもうまく「きっかけ」を与えてあげればやる気が出ることもあるそうです。科学的な実験にもとづく裏付けもたくさん示されていて、なるほどなあと納得。とはいえ、この増刊号の記事は、科学好きの方でなくても読みやすいものになっていますからご安心を。子育て中のパパ、ママ、これは知っておく価値ありですよ! 

この記事で示された原理は子育てだけでなく、スポーツ選手や結婚生活や職場にも生かせるそうです。子どものいない方にも参考になるので、よかったら読んでみてください。

こころのサイエンス04号には、このほかにも興味をそそられる記事がいっぱい。わたしは「エンロンとグーグルに見る企業環境の進化心理学」というのが特におもしろかったです。利己主義と善の追求-さて、どちらに軍配が? グーグルって無料で利用できるとても便利なサービスがいっぱいあって、いつもお世話になっていますが、こんな企業倫理をもっていたんですね。

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2008年6月19日 (木)

こころのサイエンス04号(1)-あなたは退屈しやすいタイプ?

6月18日に発売になった日経サイエンス2008年8月号臨時増刊「こころのサイエンス04号」に、翻訳協力させていただいた記事が二本載っています。どちらもとても興味深い内容なので、ちょっとご紹介。

退屈って「単調な作業をさせられているときに感じるもの」と多くの人が考えていますが、じつは同じ状況にあっても、退屈を感じやすい人と感じにくい人がいるそうです。これは注意力や集中力にも関係していて、退屈に思われる状況でも、なにか面白い要素を見つけ出して退屈を回避できるタイプもいれば、外からの刺激がないとすぐ退屈してしまう人もいるんですって。「実存主義的退屈」なんていうのもあるそうで、ご興味のあるかたは、読んでみてくださいね。

自分が退屈しやすいタイプかどうかテストする質問票もついています。ちなみに、わたしはとても退屈しにくいタイプ。ま、退屈しやすいタイプだったら翻訳の仕事はやっていられないでしょうけど。

Scan10006_2 写真をクリックすると拡大します。ほかにも興味をひかれる記事がたくさん載っています。

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2008年6月17日 (火)

洋書の話(4)訳本が手に入りにくいもの

お勧め洋書として、アルジャーノン、ダニエル・スティール、グリシャムと、いかにもという有名なものばかり挙げてしまったので、今回は翻訳版は現在手に入りにくく、しかも原書は通販で買えるものをご紹介します。

ロマンスファンにお勧めするのが、 LaVyrle Spencer です。いまはもう引退なさって新作は発表されませんが、アメリカでは静かに作品は売れつづけているようです。ロマンスの定番のハンサムでリッチなヒーローは出てきません。どちらかというと地味な人々のしみじみと心に残るロマンスです。歴史ものあり、現代ものあり。わたしが一番好きなのは Morning Gloryです(余談ですが、主人公はすごくなまりの強い英語を話すのですが、翻訳するとしたらこれってどうしたらいいのかなあ、と考えてしまいます)。世間からうとんじられてひっそりと暮らす母と子のもとに、殺人の罪という暗い過去をもつ静かな男があらわれます。このふたりの心が徐々に近づいていく過程が秀逸だし、心が通じ合ったあとの戦争による悲劇もドラマチックです。

もうひとりは、 M.M. Kayeです。The Far Pavilionsをはじめとする格調高い歴史ロマンスが有名な作家ですが、わたしは少し軽めの Death in Kenyaなどの「Death in ●●」シリーズが大好きでした。ロマンチックサスペンスというジャンルですが、舞台がベルリンだったり、ケニヤだったりと非常に国際的ですし、イギリス人作家らしいとても上品な雰囲気がすてきです。昔は翻訳本があったようですが、いまは販売されていないようです。このあいだ神田の古書店でみかけましたけど。

洋書はちょっと、と敬遠なさっている方も、いまは通信販売でいろいろな洋書が手に入るようになっているので、ぜひ、ご自分の好きな本をみつけて読んでみてくださいね。

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2008年6月15日 (日)

洋書の話(3)ジョン・グリシャム&ダニエル・スティール

マイアミで洋書を乱読していた時代から20年近くが経ちましたが、そのころ人気のあった作家で、いまでも有名な人はたくさんいます。

ダニエル・スティールの本は、待合室や空港のロビーとかで若い女性がよく読んでいました。いわゆるロマンス本も人気があって、ペーパーバックが本屋さんにはたくさんおいてありましたが、ちょっと表紙の絵がどぎついせいか、人が多くいる場所では読みにくかったのかも。その点、当時の Danielle Steelの本は単色の地にタイトルと著者の名前だけがエンボス加工してあるシンプルなものでした。お話も面白いし、長さもちょうどいいし、待ち時間に読むのには最適だったのでしょう。洋書初心者のかたも入りやすい本だと思います。

それからちょうどそのころデビューしたのが、ジョン・グリシャムでした。映画や翻訳書でもおなじみの The Firm(『法律事務所』)は、日本に帰ってきてから読みましたが、ノンストップで楽しめるはらどきどきの作品ですよね。同じ法律もののスコット・トゥローも面白いけど、なにしろ長いし、字が細かいので、ちょっとひるみます。その点、The Firmはほどよい字の大きさで読みやすいです。わりと楽に読めるのでお勧めです。

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2008年6月12日 (木)

洋書の話(2)Flowers for Algernon

おととい(6/10)の洋書の話(1)の続きです。ではお勧めの本は、と聞かれると困っちゃうんですよね。たしかにアメリカに住んでいたときには、英語の本をたくさん読んだのですが、いちいちタイトルをメモしていたわけじゃないし、当時の本は、もう手に入らないもの、すっかりすたれちゃっているものが多いと思うんです。

それじゃあ現在は?というと、じつは洋書は仕事に関連するもの以外はあまり読みません。翻訳が仕事ですから、ほとんど毎日英文は読みます。でも、娯楽と勉強のためには日本語の本のほうがいいんです。少しでも日本語表現を磨きたいし、語彙ももっともっと増やしたいので。そういうわけで、お勧めの本が古いものになってしまって申し訳ありません。

前置きが長くなりましたが、お勧め本の一冊目は、"Flowers for Algernon"です。「なーんだ、『アルジャーノンに花束を』か、月並みー」と思われた方も多いのでは。とても有名な本ですものね。ストーリーも感動的ですが、お勧めする理由は、この本は英語で読んだほうが断然面白いから(翻訳版のほうは読んだことがないので、翻訳がどうのというのではありません)。主人公の日記形式で書いてありますから、最初はとってもやさしい英語で、しかも綴りや文法のミスがいっぱい。それが知能が上がっていくにしたがい、徐々に正しく聡明な感じの英語に変わっていくさまがじつに興味深いのです。Tonite after werkなんて書いてあって、正しいスペルを想像するのもけっこう楽しいです。

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2008年6月10日 (火)

洋書の話(1)

バレーボールの話ばかりで、本ブログのサブタイトル「英語と翻訳にまつわるちょっと役に立つ話、ぜんぜん役に立たない話」の赤字部分ばかりになっている最近のブログ。心を入れ替えて、きょうは英語の話。

洋書をよく読まれる方には無用な話ですけど、まだ挑戦したことがないという方に、ちょっぴりアドバイス。簡単な英語で、面白くて、自分が知っている大好きな話から入るといいかもしれません。知らない話でもいいですけど、とにかくストーリーが比較的シンプルでわかりやすくて、最後まで辞書なしで読み切れるのがいいと思います。といっても子どもの本でなくていいんです。子どもの本が心からお好きならそれもいいですけど、やっぱり自分が楽しめる本がいちばん。

慣れてくれば描写のすばらしい本もいいけど、ホテルのロビーの描写が延々と続くような本だと先に進むのはなかなか困難。しかも、描写の部分って知らない単語がたくさんでてくることが多いんです。すると「わからない」という気持ちが先に立ってしまいます。

とにかく一冊読み切ることができて、面白かったなあと満足感にひたれるものに出会えるとまた次の洋書に挑戦しようという気持ちになれると思います。わたしの"Golden Urchin"がそうだったように(5月30日のブログ)。

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2008年6月 9日 (月)

応援練習

日本男子バレーボールチームは2位で世界最終予選を終えました! 興奮の約10日間。きょうからはちょっと気持ちを切り替えて仕事しなくちゃ。

ところで、テレビ観戦している方は、観客から聞こえる応援の声がよくそろっているのに気づいていらっしゃることと思います。あれは、試合前に、みんなで練習するんです。「レッツゴー、ニッポン、タンタン、タタタ」とか、サーブのときの「ソーレ!」の声とか。なので、観客席は一時間前から盛り上がってます。

今回のテレビ放送で男子バレーにあらためて興味をもたれた方にお勧めの本。わたしも大古さんの時代はともかく、現在の男子バレーボールのファンになったのはごく最近です。いろいろ雑誌なども読ませていただいてますが、バレーボール記者の市川忍さんのお書きになった『復活』はとても面白かったです。バレーとそれぞれの選手への著者の愛が感じられますし、選手、監督、コーチの皆さんは見えないところでこんなにがんばっているんだなあとあらためて実感できます。もっとバレー観戦が楽しくなると思いますよ!

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2008年5月30日 (金)

Golden Urchin--洋書事始め

アメリカで最初に読んだ本は、Madeleine Brentというイギリスの作家のGolden Urchinという作品です。図書館でなんとなく見つけたのですが、どうしてその本を選んだのかは覚えていません。挿絵のないベージュ色のシンプルな表紙のハードカバーだったように記憶しています。

ジャンルはヒストリカルロマンチック冒険サスペンスといったらいいでしょうか。赤ん坊のときにオーストラリアの先住民に拾われたイギリス人の少女が、砂漠で生き倒れになっていた青年を救ったことから、文明社会に戻り、オーストラリアからイギリスへとわたって、やがて出生の秘密を知ることになる、という物語です。舞台はオーストラリアの砂漠や農場、豪華客船、イギリスの貴族の館、寄宿学校とくるくる変わります。主人公は、心やさしく元気いっぱいな野生の少女、そのほかの登場人物も先住民族、ハンサムな青年、彼の妻で病弱で天使のような女性、病気のために日光にあたることができない謎の貴族、詐欺師のカップル、絵にかいたような極悪人と多彩です。

渡米前には、たった一冊アガサ・クリスティのペーパーバックを読んだことがあるきりでしたが、この本はすごく面白くて、一気に読んでしまいました。辞書なんて使わず、あとで試験があるわけじゃないので、多少わからないところがあってもへっちゃら。

Brentさんはこの本を最後に、新作はお書きにならなかったようですが、すっかりファンになり、いろいろな図書館で昔の作品を探し出して、ほとんど読みました。どれも面白かったけれど、やはり、このGolden Urchinが一番印象に残っています。

現在は海外のアマゾンでも入手はむずかしいです。思い出の本なので、いつか翻訳する機会があったらいいなと、古書でBrentさんの本を探しましたが、この本ともう一冊手に入っただけです。

Dsc00084 20年前に出版されたGolden Urchinのペーパーバック版。

前の持ち主Lucieさんのサインが入っています。

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