「仕事のポーション」 訳者あとがき

翻訳者Fは訳書あとがきを書こうとしています。

ところが、なんだか書く気が起こらない。エネルギーが出ないのです。

Fは、なぜ書く気が起きないのだろうと考えます。①昨夜はよく眠れなかったし、このごろ運動不足で体調が悪く、頭がうまく働かない。②あとがきの出来が悪いと、本の売れ行きに響くかもしれないから、がんばらなくてはいけないのだけれど、うまく書ける自信がない。③仕事部屋が雑然としていて気が散り、仕事に集中できない。④キッチンの大掃除など、たまっている家事のことが気になってしかたがない。⑤パソコンをつけると、ついネットサーフィンをしたり、メールチェックをしたりしてしまう。⑥きょうはやけに人から電話がかかってきて、すぐに仕事が中断される……とまあ、理由をあげればきりがありません。

そこでFは本書を開き、「Energy Up! 87 自分を律する」の項を読みます。するとローラ・スタック氏はこう言って、Fを励まします。「ブログをのぞいたり、メールを書いたりして一時間半も無駄にせずにいたら、あなたはどのくらいのエネルギーを有用なことに注ぎ込み、自分に満足して一日中いい気分でいられるでしょうか? ついに仕事をやり終えたときには、いままで感じていたストレスから解放されます。それこそが報酬です」Fはうん、うん、そうですよねえ、とうなずき、おもむろにキーボードをたたきはじめます。

とはいえ、やる気の出ない数々の原因は、まだ根本的には解決されていません。でも、大丈夫。解決法はこの本の中にすべて書いてあるんです。本書は、大きく3つのチャプターにわかれていて、それぞれのチャプターは、エネルギー不足の原因となる「体」「行動」「環境」について扱っています。ですから、たとえば①については「体」を、②については「行動」を、③や⑥については「環境」を見れば答えやヒントが見つかるのです。

さて、この翻訳者F、生来かなりズボラではあるけれど好奇心旺盛で、好きなことならやる気まんまんという人間だったのですが、アラフィフ(around fifty)になったころから、極端にエネルギー不足を感じるようになりました。でも、運のいいことに、ローラ・スタック氏の本を翻訳するというたいへんラッキーな仕事に巡り合いました。Fは翻訳者でありながら、もっとも熱心な読者でもあるのです。こういうのを役得っていうのかなあ。Fはこの本をつねに仕事机のそばに置いておき、エネルギー切れになりそうになったら、ときどき読み返そうと思っています(Fってだれか、おわかりですよね!)。

著者のローラ・スタック氏は小さいころから整理整頓が得意でした。勉強でもおけいこごとでもいっさい手を抜かず、とび級をして大学を卒業してMBAも取得。ビジネスコンサルタントとして若いうちに独立して、講演やセミナーで全米をかけまわっていました。

けれどある日、仕事にふりまわされて、幸せを感じるゆとりもない自分に気づきました。自分にとって一番大切なものは何? 墓標に「彼女は死ぬまでがむしゃらに働きつづけました」と刻まれるような人生を送りたいの? それから彼女は軌道修正をはじめ、人生で一番大切なもの(それは家族でも、趣味でも、何でもいいのです)のために使う時間をつくることを目指そうと考えるようになりました。

彼女が伝授するのは、そのための生産性向上法です。もっと仕事をするために生産性をあげるのではなく、仕事はなるべくシンプルに能率よく行って、最短の時間でやり遂げ、自分自身のための時間を増やそうというのです。そうしてつくられた時間から真のエネルギーが生まれます。生きる喜びを感じられるから、仕事に励むことができる。体を休め、栄養を充分とり、運動もしているからこそ、仕事でがんばれる体力がつく。そうしたよいサイクルをつくりあげることが本書の目的です。

さあ、読者の皆さんも、三週間ローラ・スタック氏のセミナーに参加したつもりで、本書に取り組んでみてください。きっと心も体もリフレッシュして、心のエネルギーが満タンになりますよ!

二〇〇九年五月          古川奈々子